【書評】宇宙飛行士の採用基準

概要

宇宙飛行士をどう選抜し、どう訓練し、どう育てるのか。そしてそこから浮かび上がる、「失敗が死につながる世界で必要とされる資質」とは――? ビジネスマンにも是非読んでもらいたい「人材採用・育成」の究極の姿

書評

以前、「ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験」と言う本がありましたが、
そちらはどちらかと言うと宇宙飛行士になりたい「求職者」側の視点から描かれていました。
対してこちらの本は宇宙飛行士を採用する「採用者側」の視点から描かれています。

タイトルからは一時期流行った「採用基準」と言うマッキンゼーの採用基準をサンプルに書いた本の宇宙飛行士版なのかな?と思っていましたが、想像以上に初めて知った意外な事実や考えが多かったので参考になりました。

まず第一章にあったのが、「採用する側が負う責任」です。
宇宙飛行士に採用するような人は基本的にエリートで将来の日本を代表する人材であることが多いため、採用してしまうと元職場からすれば「エース」が抜けてしまうことになるため本当に採用してしまっていいのか?という考えを持っているそうです。
そのために、宇宙飛行士採用試験では必ず元々の職場からの推薦状をもらうことを義務化しているそうです。これは民間企業ではほぼありえない流れなので驚きでしたね。

第二章では、宇宙での心理学やチームマネジメントです。
ベースとしては航空業界で用いられている「クルーリソースマネジメント」という手法を宇宙用に発展させた「スペースフライトリソースマネジメント」という手法を用いているそうなのですが、結構一般社会にも通用しそうなやり方なように感じました。
例を挙げると、このマネジメント手法では「権威勾配」はしてはいけないことになっています。つまり、「上司が部下を権威に任せて怒る」ことですね。あくまで指摘することにとどめておき、さらに後できちんとフォローすることが推奨されているようです。
これは一番のリスクがコミュニケーション不全と捉えているからで、部下に怒ってしまうとその部下は今後その上司に対して健全なコミュニケーションを行えなくなるからだそうです。

第三章ではようやく本題の「宇宙飛行士の採用基準」
ここで出てくる用語が「セレクトイン」と「セレクトアウト」。
セレクトインは、敢えて選ぶやり方でいい人をピックアップする通常の選考ですね。
セレクトアウトは、基準に満たない人をアウトさせる、つまり足切りです。
ただ、このセレクトアウトの基準がめちゃくちゃ厳しい。
実際に直近の採用試験ではセレクトアウト試験が完了した段階で900名の応募者が10名まで減っています。実際に宇宙飛行士に採用されたのは3名でしたので、とてつもなくハードルの高い足切り試験になっているわけですね。

第四章の「飛べる人材の育て方」
ここでは宇宙飛行士を育てるための方法が書いてありますが、これもまた計算&議論され尽くされたやり方で行なっていることがわかります。
印象的なのは、宇宙飛行士の訓練インストラクターにもそれ相応の能力が求められることですね。
実際にその道のプロというだけではダメで指導力はもちろんのこと、世界トップクラスの人材である宇宙飛行士と良好な関係を築くことができる「人格面」も重要視されるとのことです。

なんだかこの本の要約になってしまいましたが、上記以外にもNASAやJAXAが考えている「宇宙飛行士像」というものがすごく分かりやすく理解することができます。
そしてそれはそのまま普通のサラリーマンでも採用や人事、マネジメントを担当している方にも参考になることが多いので、ビジネス書としての活用もできると思いますので、オススメです!