【書評】『INSPIRED 顧客の心を捉える製品の創り方』プロダクト企画に関わってる人なら必読な本

最近いわゆるWebサービス企画やWebプロデューサー・ディレクター系の職種をシリコンバレーあたりで「プロダクトマネージャー」という名前で呼ぶようになってきていて、職種としてきちんと体系化され始めているとのことです。その中でこの本が日本語化されつつプロダクトマネジメントに必要な情報をほぼ全て体系化されているとのことで読んでみました。この辺りの職種って基本「何でも屋」なんでなかなか似たような本なかったんですよね。
概要
マーティ・ケーガンの著書「Inspired」は、彼の二十年に渡る製品開発の経験を凝縮したプロダクトマネジメントのバイブルである。世界的に急速に変化する情勢の中で、顧客を惹きつける製品をいかに作り上げていくのかという命題に対し、マーティは非常に具体的な開放で答えている。
なぜ、ある製品は、ずば抜けた成功をもたらし、他の製品は平凡な結果しか得られないのか?
ユーザーを惹きつける製品の開発は、価値が高く、使い勝手が良く、そして実現可能な製品を"見つける"ことから始まる。もし、それを発見できていないなら、何も開発する価値はないとマーティはいう。それを具体化するためには、多くの問題を解決しなければならない。
- どの製品の可能性を追い求めるべきか?
- 製品が成功するという証拠をどうやって得るか?
- 可能な限り無駄を削ぎ落とした製品をどう設計するか?
- 社内の矛盾した要請をどうやってバランスさせるか?
- アジャイル手法をどうやって導入するか?プロダクトマネジメントの専門家であるマーティは、これらの問題に答えるだけでなく、ハイテク業界で最も成功した企業で働いた経験から得られた教訓、テクニック、そしてベストな手法を数多く紹介している。成功した企業とそうでない企業に決定的な違いがある。
この本は、ソフトウェア業界向けに書かれたものではあるが、多くの知見は、ソフトウェア業界に限らず、多方面の業界にも通用するところが多い。特に、今後、世界的な競争にさらされ、大きな変化が予測される業界においては、ドッグイヤーに生きるソフトウェア業界での経験から学ぶものは少なくないはずだ。
『INSPIRED 顧客の心を捉える製品の創り方』紹介文より

過去二十年に渡り、著者マーティ・ケーガンは、ヒューレットパッカード、ネットスケープ、アメリカオンライン、イーベイなど、名だたるシリコンバレー企業で活躍し、製品やサービスの開発に色々な立場で携わってきた。
eBayではプロダクトマネジメント担当の上級副社長を務め、グローバルなEコマースサイト向け製品やサービスの定義を行う重責を果たした。その後、ユーザーを魅了し、大きな成功を遂げる製品を作ろうとする人々を支援するため、シリコンバレープロダクトグループ(SVPG)を立ち上げ、執筆活動、ワークショップなど、コンサルティング活動を精力的に展開している
目次
はじめに
『INSPIRED 顧客の心を捉える製品の創り方』目次より
・この本を読んでいただきたい方
・本書の構成
・コラム0-1デザインが優れた製品
・参考事例
第1部:ソフトウェア製品の開発に関わる人たち
・製品開発のための組織
第1章:製品開発のカギを握る担当者とその役割
・現在のソフトウェア製品開発のための組織とは?
・プロダクトマネージャーの役割
・ユーザーエクスペイレンスデザイナーの役割
・プロジェクトマネジメントの役割
・エンジニアリングの役割
・コラム1-1アジャイルなチームとは何か?
・サイト運用の役割
・プロダクトマーケティングの役割
・コラム1-2 それぞれの担当者の人数の適切な割合は?
第2章:プロダクトマネジメントとプロダクトマーケティング
・この2つは同じものではない
・ケース1:マーケティング主導の製品である
・ケース2:1つの役割に2人の担当者がいる
・ケース3:1人で2つの役割を兼務している
・解決法
第3章:プロダクトマネジメントとプロジェクトマネジメント
・インターネットがこの2つの役割分担をも変えた
・コラム3-1 優れたプロジェクトマネージャー7つの条件
第4章:プロダクトマネジメントとデザイン(設計)
・ユーザーエクスペリエンスデザインを理解する
第5章:プロダクトマネジメントとエンジニアリング(実装)
・正しい製品を作るのか、それとも、製品を作るのか
・コラム5-1 遠隔地の開発担当者とうまくやっていくにはどうすればいいか?
・コラム5-2 外注という手もある
・コラム5-3 エンジニアリングチームがコードを書き直したいだって!?
第6章:プロダクトマネージャーの条件
・優秀なプロダクトマネージャーはどこにいる?
・人間的な資質と姿勢
・スキル
・では、どこでどういう人間を見つけるのか?
・コラム6-1 同じ分野での経験はどれだけ重要か?
・コラム6-2 年齢は重要か?
第7章:プロダクトマネージャーを管理する
・会社の核となるチームを作り上げる
・プロダクトマネジメントチームを組織する
・会社の製品戦略を決める
・コラム7-1 プロダクトマネージャーをどうやって評価するか?
・コラム7-2 プロダクトマネジメントの居場所はどこがいい?
第8章:パットン将軍の教え(プロダクトマネージャーへのアドバイス)
・目標を与えれば人は動く
第9章:プロダクトマネージャーを支えるブレインたち
・社内の賢い人を探し出す
第10章:上から降ってくるものをうまくさばく
・10のテクニック
第2部:ソフトウェアを開発するプロセス
・さまざまな活動とベストプラクティス
第11章:製品の市場性評価
・開発すべき問題を特定する
・コラム11-1 新しく作るか、古いものを直すか?
・コラム11-2 お金はどこに?
第12章:製品を見つけ出す
・正しい製品を定義する
・コラム12-1 製品の発見を予定通りに進めることはできるのか?
第13章:製品理念
・何が大切かを決める
・コラム13-1 意見の対立を解決する
第14章:製品委員会
・タイムリーで確実な意思決定をするために
・補足
・コラム14-1 プロジェクトコストの見積もりはいつやればいいのか?
第15章:ユーザーモニター制度
・製品開発のパートナーたち
・モニターとして参加する顧客やユーザーにとってのメリット
・プロダクトマネージャーにとってのメリット
・気をつけなければならないこと
・コラム15-1 顧客と話してはいけないのか?
第16章:市場調査
・その可能性と限界を理解する
・市場調査の可能性
・市場調査の限界
・コラム16-1 フォーカスグループはどうなのか?
第17章:プロダクトマネジメントのためのペルソナ
・ターゲットユーザーを理解する
第18章:製品仕様はどうあるべきかを考える
・要求仕様書よ、さようなら
第19章:設計と実装
・実装の前にユーザーエクスペリエンスを設計する
第20章:必要最小限まで削ぎ落とされた製品
・機能を減らすか、それとも発売を遅らせるか?
第21章:製品仕様の検証
・価値があって、使いやすくて、実現可能であるという確証を得る
・フィージビリティ(実現可能性)の検証
・ユーザービリティ(使いやすいかどうか)の検証
・価値(買いたいと思ってもらえるかどうか)の検証
第22章:製品プロトタイプの検証
・製品のアイディアを実際のユーザーの前でテストする
・テストの参加者を見つける
・テストの準備
・テスト環境
・プロトタイプをテストする
・プロトタイプのアップデート
第23章:現在の製品を改善する
・改善とは機能を追加することではない
第24章:ユーザーにやさしい緩やかなバージョン以降
・ユーザーに苦痛を与えないために
第25章:迅速な対応
・開発を始めたら最後まで手を抜かない、そしてリリースサイクル全体を守る
第26章:アジャイル開発手法を使いこなす
・10のテクニック
・コラム26-1 初期のスプリントはプロトタイプの代わりにならないか?
・コラム26-2 アジャイル開発手法は製品ソフトウェアにも使えるか?
第27章:ウォーターフォールプロセスを使いこなす
・先回りして手を打つ
・一般原理
・プロダクトマネジメント上の問題点
・まとめ
第28章:ベンチャー企業のプロダクトマネジメント
・とにかく製品を見つけ出すことに尽きる
第29章:大きい会社でもイノベーションは不可能ではない
・困難だが努力する価値はある
第30章:大きい会社で賢く立ち回るには
・10のテクニック
第3部:さまざまなソフトウェア製品・サービス
・ワクワクする製品を求めて
第31章:アップルに学ぶ
・こんなハードウェアメーカーだってある
第32章:特別仕様には注意
・この坂道は転げやすいので気をつけて
・コラム32-1 顧客の要求を管理するツールはどうか?
第33章:古くて新しいもの
・可能なことは常に変わっていく
・コラム33-1 イノベーションは終わったか?
第34章:不安、金銭欲、そして精神的な欲望から人はモノを買う
・製品における感情の役割
第35章:エモーショナルアダプションカーブ(購買層の感情に注目する)
・ジェフ:ボンフォート氏へのインタビュー
第36章:使いやすさと見た目
・どっちも大事
第37章:個人向けインターネットサービス製品で大切なこと
・10のテクニック
第38章:企業向け製品で大切なこと
・10のテクニック
・38-1 ソリューション製品はどうなのか?
第39章:プラットフォーム製品で大切なこと
・見返りは大きいが、簡単ではない
まとめ
第40章:ベストプラクティスのまとめ
・10の実戦すべきこと
第41章:プロダクトマネージャーの懸案事項リスト
・10の気にかけなければならないこと
もっと詳しく知りたい方のために
謝辞
著者について
日本語版の出版にあたって
書評
概要
インターネットサービスの企画やプロダクトマネジメント(企画やディレクター)をやっている人なら、この本の全ページに「いいね」を押したくなるほどごもっともなことだけが買いてある本。
結構なボリュームなのに重要なことをまとめようと思っても全部が重要なので全然まとめられません笑
感想や紹介
いわゆる「こうすべき」な理想論が書いてはあるのですが、現実的な問題として「こういう場面もあるけどどうすればいいか?」「何に注意をしていけばいいか」「これとこれの違いは?」など心でも読んでるのか?というくらい現場に即した形で説明が繰り返されるので、いちいち書いてあることに自動的に納得させられます。
読むのにおすすめな人
ボリュームが多くてなかなか一度では覚えきれないので自分としては1年に1回以上は読み返して、その時に困っている重要なものを随時取りれていければと思っています。
ソフトウェアプロダクト開発に関わっている人にはオススメというか、読むのが義務に近いよさです。
※新しい版が出たことでどうやらこの版は絶版になってしまったようです。↓のリンクは新しい版へのリンクになっています。新しい版についても近日中に書評書こうと思ってますので少々お待ちください。
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