【書評】『ソフトウェアファースト』いわゆるDX化するときの方法が詳しく描かれた本。

5月 4, 2021

ソフトウェアファースト

概要

AI活用、デジタル・トランスフォーメーション、Saasをベースにしたサブスクリプションビジネスetc.
今、世界中の企業がITを駆使したデジタルシフト(事業のサービス化)を急いでいる。

日本企業がこの世界的潮流に取り残されないためには、かつての成功モデルである「製造業的ものづくり」から脱却し、ソフトウェアを中心としたサービス志向の開発体制を構築することが重要だと著者は説く。

ソフトウェアがビジネスの中心を担い、インターネットがあらゆるビジネスの基盤となりつつある今、日本企業はどう変化すれば生き残れるのか?

世界的IT企業で働き、現在は製造業をはじめとする日本企業の変革にも携わる著者が書き下ろす、ソフトウェア・ファーストな開発論をぜひ読んでほしい。

『ソフトウェアファースト』商品紹介より
著者紹介
及川卓也

及川 卓也(おいかわ・たくや)
大学卒業後、DEC(ディジタル・イクイップメント・コーポレーション)に就職してソフトウエアの研究開発に従事する。その後、MicrosoftやGoogleにてプロダクトマネジャーやエンジニアリングマネジャーとして勤務の後、プログラマーの情報共有サービスを運営するIncrementsを経て独立。2019年1月、テクノロジーにより企業や社会の変革を支援するTably株式会社を設立。

目次

はじめに
 ・ボーッと生きてんじゃねえよ!
 ・突然ですが、クイズです。
1章 ソフトウェア・ファースト
 サービス化する社会
  ・オール・シングス・マスト・パス
  ・産業のサービス化とは
  ・サービス化を象徴するSaaSの普及
 サービス化を支えるプロダクト開発手法の変化
  ・未来のユーザーのために
  ・機敏性を高めるファイル開発手法
  ・走りなっがら感あげるDevOps
 ソフトウェア・ファーストとは
  ・あらゆる企業活動を変革する
 Column アズ・ア・サービス開発、実践の前提条件
  ・サイボウズ 執行役員 開発本部長 佐藤鉄平氏に聞く

2章 IT・ネットの"20年戦争"に負けた日本の課題と光明
 日本経済の没落とIT産業力の関係
  ・80年代まで最強を誇った日本のハイテク産業
  ・アプリケーションの時代になって失われた競争力
 要因1 : ITを「効率化の道具」と過小評価
  ・過去の成功体験に囚われITが持つ力を見誤る
  ・SI産業の歴史と拡大してきた背景
  ・SIerの功罪
  ・SIerが採るべき今後の選択肢
 要因2 : 間違った「製造業信棒」から抜け出せない
  ・開発の終わりがなくなった現在のソフトウェア
  ・パッケージソフトからSaaSへの移行で変わること
  ・製造業の開発プロセスを参考にするべき点と異なる点
  ・ソフトウェアに対する考え方、日欧米の違い
 要因3 : サービス設計〜運用面での誤解
  ・「狩野モデル」で考える、間違った品質追求の愚
  ・現実に即していない情報セキュリティポリシー
  ・データ活用に感じる2つの違和感
 ITサービスで存在感を示すためのアイデア
  ・「フィジカル x サイバー」領域の新規事業
  ・プラットフォームを構築せよ
 Column あらゆるサービスは「課題解決」のためにある
  ・エムスリー VPoE 山﨑聡氏、AI・機械学習チームリーダー 西場正浩氏に聞く

3章 ソフトウェア・ファーストの実践に必要な変革
 DXの本質的な意味
  ・バズワードに踊らされないために
  ・各社それぞれの定義
  ・DXの本質はIT活用を「手の内化」すること
  ・DXの勝者と敗者:ネットフリックスとブロックバスター
  ・DXは新たな価値を生み出す取り組み
 ポジション別に求められる意識の変化
  ・経営陣は先頭に立つ
  ・マネジャーが変われば組織が変わる
  ・現場社員が常に主役
  ・「何を提案しても会社は変わらない」と嘆く前に
 プロダクト企画のやり方を変える
  ・ユーザーにーずを理解する難しさ
  ・プロダクトアウトは悪か
  ・10X(テンエックス)を目指す
  ・体を表す名とは
  ・競合に対する見方を変える
  ・ハードウェアはソフトウェアのためにある?
  ・リーン・スタートアップとデザインスプリント
  ・アンチ・リーン・スタートアップ
  ・ユーザーを理解する
 プロダクトの骨太の方針を決める
  ・骨太の全てを表す王道PRD
  ・1枚で全てを表すワンページャー
  ・プレスリリースから始めよう
  ・話しにくいことこそ最初に決めるインセプションデッキ
  ・もし日本語ワープロを作れと言われたら
  ・OKRの精神に学ぶ
 リリース後の運用を最初から考える
  ・使われないプロダクトはゴミ
  ・ユーザーの利用状況は宝の山
  ・NPSを活用する
  ・全員を幸せにしなくていい
  ・ITが全てではない
 組織変革を並行して進める
  ・変革の拠り所となるミッション
  ・エイリアンとミュータントを登用する
  ・デジタイゼーションとデジタライゼーション
  ・経営陣の中で誰が決めるのかを明確にする
  ・組織文化を変えるヒントは「インナーソース」にあり
 Column 変革には長期視点の「仕込み」が必要
  ・コニカミノルタ 執行役 IoTサービスPF開発統括部長 江口俊哉氏に聞く

4章 これからの「強い開発組織」を考える
 理想の体制を考える前に
  ・開発を外部委託する問題点
  ・内製化に対する4つの誤解を解く
  ・外部リソースを使っても問題ない場合は?
  ・全員がプロダクト志向になる
  ・内製化のモデルケース:アマゾンの倉庫自動化
 開発組織を整備するステップ
  ・ソフトウェア開発に必要な職種
  ・開発組織におけるマネジャーの役割
  ・プロダクトマネジャーとエンジニアリングマネジャー
  ・CTOとVPoE
  ・自社に合ったジョブ・ディスクリプションを作ってみる
  ・職能組織と事業主体組織
  ・出島戦略
 エンジニアの採用難をどう乗り越えるか?
  ・給与テーブルに紐づく人事制度を見直せ
  ・採用後の定着も見据えて「評価」のやり方を変える
  ・評価基準の設定に悩んだ時の解消法
  ・採用戦略へのアドバイス
  ・人材エージェント頼みの採用は間違い
  ・最初の1名の重要性
  ・組織文化を変える
 Column 変化に強い開発組織は「信頼」から生まれる
  ・さくらインターネット 代表取締役社長 田中邦裕氏に聞く

5章 ソフトウェア・ファーストなキャリアを築くには
 キャリア形成の「型」を知る
  ・T型のスキル構築
  ・T型からπ型へ
  ・複数の縦軸を作る時の選び方
  ・スキルの棚卸し
 将来のキャリアパスを考える
  ・ソフトウェアエンジニアのキャリア3大分類
  ・職位とパフォーマンスをどう評価するか
  ・マネジャーになることに抵抗がある人へ
  ・日本の典型的な事業会社でキャリアを築くには
  ・職種別・具体的なキャリアパス
  ・ソフトウェア・ファーストな人材になる第一歩
 生涯「ソフトウェアに携わる人」として成長する
  ・point1 "なんで俺だけ?" - 社会人1年目
  ・point2 "ひたすら挑戦" - 米国マイクロソフトへ出向
  ・point3 "このままでいいのか" - マイクロソフトへの転職と汎用スキル習得
  ・point4 "Something New" - 安定への恐怖 〜 Googleへの転職
  ・point5 "Something new again" - 更なる高みを目指して
  ・point6 "独自色" - スタートアップへの挑戦 〜 独立
  ・全ては移り変わる

おわりに
 ・「はじめに」で出したクイズの答え合わせ

付録 モダンなプロダクト開発を行うための技術と手法
 ・クラウドでのアズ・ア・サービス
 ・マイクロサービスアーキテクチャ
 ・開発・運用手法の進化

『ソフトウェアファースト』目次より

書評

概要

プロダクトマネージャーなどの肩書でGoogleやMicroSoftなどで所属していた及川さんの本。

今まで日本企業はものづくり、つまりハードウェアファーストで進んできましたが、今後はソフトウェアファーストになることが重要であり、どうやったらソフトウェアファーストな組織になれるのか?また、自分自身がソフトウェアファーストになるためにはどのようなキャリアを進めていければいいのかという内容が書かれています。

感想や紹介

今までハードウェアファースト(ものづくりファースト)で進めていた会社を真逆とは言えないにしてもソフトウェアファーストに変えるというのはかなりの変革ですので、かなり広範に渡ってソフトウェア開発におけるプロジェクトの進め方などについての説明がわかりやすく書かれています。

正直一つ一つの説明は広範なためにどうしても浅かったり、薄い部分もあるのですが、そこは本の内容的にしょうがない部分ではあるので、深く知りたい場合はそれに関する書籍を別に購入してもらった方がいいと思います。本書の内容でも重要なエッセンスは十分に理解できると思います。

ハードウェアファースト(ものづくりファースト)からソフトウェアファーストへの組織自体を切り替えていく方法論の本としては、実はあまり類似する本を知らず、とは言え今の日本はいわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)という名前でデジタルへの切り替えをしていくことが企業が生き残るための必要条件となっている割にはそのための方法論は細切れの形ではそれなりに充実してはきているのものの、きちんと体系化された上で総論としてまとまっているものはほとんど見たことがなかったので、そういった課題を感じている人たちには待望の本になると思います。

読むのにおすすめな人

事業会社内だけでなく、DX導入を進めているSIerの担当者だったり、IT業界の人でも今のソフトウェア開発の方法論などがわかりやすくまとまっているので読んでおいた本がいいと思います。

いろんな会社や業界の人にとっておすすめな本。