【書評】「良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方」ウェブサービスを企画・運営している人は必読!

9月 29, 2020

良いウェブサービスを支える利用規約の作り方

仕事で利用規約を変更することになり、サービス開設時から初の改訂ということや、自分としても久しぶりの利用規約改定ということで色々と法改正もあったりあるので参考図書としてこちらの本を読んでみました。読んでみて思ったのは控えめに言っても最高の本ですね。ウェブサービスに関わる人は職種に関わらず全員読むべきだと思います。

概要

「どうせ読まれないし」「まるごとパクればいいんじゃないの」「免責しとけばなんとかなるよ」と思ってませんか?規約の中身はサービスそのもの。作りこめば作りこむほど、あなたのサービスやアプリの質も高まる。「利用規約」「プライバシーポリシー」「特定商取引法に基づく表示」のひな形+ウェブサービスに関する法規制の必須知識。ひな形の英訳つきでグローバル展開も視野に。

「BOOK」データベースより
著者紹介

2001年弁護士登録。司法研修中から創業に関わっていたITベンチャーに社内弁護士として参画し,ECサイトの立ち上げなどに関わる。 2002年6月にAZX Professionals Groupに入所。ベンチャーをクライアントとする各種契約書,利用規約等のレビューおよび作成,ビジネススキームの適法性の検討などの経験を積み,2008年9月,パートナー就任。KDDI∞Labo社外アドバイザー。 起業家・ベンチャー関係者向けに,利用規約,プライバシーポリシー,サービスの適法性などに関するセミナー・執筆などを数多く行っている。

著者紹介

ブログ『企業法務について』管理人。SIer,移動体通信キャリア,ソフトウェアベンチャーなどを経て,現在は株式会社トクバイで法務を担当。ウェブサービス事業会社をはじめとした複数の会社での法務経験やiOS・Windows向けアプリの開発経験を活かし,エンジニアと法務の架け橋になるべく日々鍛錬中。

著者紹介

弁護士ドットコム クラウドサイン事業部「サインのリ・デザイン」編集長。電気通信業,人材サービス業,ウェブサービス業ベンチャー,そしてスマホエンターテインメントサービス業と,上場・非上場問わず大小様々な企業で法務を担当。著書として『ライセンス契約のすべて 実務応用編』(第一法規,共著),『アプリ法務ハンドブック』(LexisNexis,共著),論文として『インターネット上に存在する応募者のプライバシー情報を企業の採用選考において取得・利用することについての法的検討』(『情報ネットワーク・ローレビュー』第10巻所収)がある。

目次

はじめに
第1章 3大ドキュメント超入門
 01 5つの疑問から読み解く「利用規約」ホントのところ
 02 最低限おさえておくべき「プライバシーポリシー」のポイント
 03 通信販売に必要な「特定商取引法に基づく表示」
第2章 トラブルを回避するための注意点と対処法
 01 規制とうまくつきあうには
 02 戦う土俵は「日本」とは限らない 〜準拠法と裁判管轄の合意〜
 03 そのサービス名、使って大丈夫ですか 〜商標権の侵害〜
 04 ユーザーがコンテンツをアップする場合の「権利処理」
 05 契約を成立させるための「同意」の取り方
 06 「権利侵害コンテンツ」にはどう対応するか?
 07 禁止事項とペナルティの考え方 〜最も登板機会の多い「エース」〜
 08 課金サービスでは「契約関係」の整理・把握が不可欠
 09 ウェブサービス事業者に有利すぎる条件は危ない 〜免責と消費者保護〜
 10 ポイントの有効活用 〜資金決済法の前払式支払手段の規則〜
 11 CtoCサービスにおけるプラットフォーム運営者の落とし穴
 12 プラットフォームの利用・運営にまつわるリスク
 13 未成年者による利用と課金
 14 ユーザーのウェブ上の行動履歴は、どこまで利用していいか
 15 ウェブ上での広告・マーケティングに対する規制
 16 広告メールを送付する際に注意すべきこと
役に立たない利用規約を生み出す「5つの落とし穴」
 1 実効性の落とし穴
 2 違法性の落とし穴
 3 炎上の落とし穴
 4 正確性 / 読みやすさの落とし穴
 5 同意取得の落とし穴
第3章 すぐに使えて応用でいるひな形
 利用規約のひな形
 プライバシーポリシーのひな形
 特定商取引法に基づく表示のひな形
おわりに 心に残る不安を解消するには
 一人で考え込むよりも、まわりを巻き込む
 弁護士・法務担当者の3つのホンネ
 利用規約の限界を乗り越えるための「Kiyaku by Design」
特別付録 ひな形英文訳

「良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方」目次より

書評

ウェブサービスを立ち上げたり運営したりする中で重要となる法律問題や必要性が高い3つの規約「利用規約」「プライバシーポリシー」「特定商取引法に基づく表記」を中心に法律の専門家ではないエンジニアや経営者向けにも理解できるように書かれています。

自分もまさにこの間サービスの大きなリニューアルがあり、それに伴って利用規約などの変更をする必要があったのですが、この本のようにウェブサービスの規約に特化した本が数少ないこともあって本当に何度も何度も読み返して弁護士や法務担当の人とやりとりする上で助けになりました。多分この本がなかったら出来上がった利用規約はだいぶレベルが低いものだったりして、考慮漏れなどが続出だったと思います。

この本のはじめにも書かれているのですが、ウェブサービスを展開する時は新しい事業や業界で展開することが多いので、法律自体が未整備なことが多いです。ただ、それにあぐらを書いて適当な法律意識で進めるとすぐに社会的な問題となったり知らず知らずの内に法律違反でサービスや事業の営業停止を受けたりになってしまいます。自分もウェブ業界で仕事をしてきて似たような場面を結構見てきました。

印象的なのはソーシャルゲームのコンプガチャで、あれは多少景表法の知識があったらすぐに「絵合わせ」の問題となって違法というのはすぐに分かることだったのですが、そういう状況にもかかわらずどの会社も認識がなかったのかそれとも分かっていても対応しなかったのか、社会問題になって国からの規制が入る状態にまでなってしまいました。

またAirBnbやUberなども日本でやったら法律違反なので、この辺りも知らなければ事業を進めたとしてもすぐに営業停止を受けてしまいます。そういった意味でビジネスを担当する人間としては、自分が担当するビジネス周辺の関連法規は最低限知っておく必要があると思っています。

この本に書いてあることで実は法律に引っかかる内容なのに意外と知られていないのが、チャットサービスを展開するには電気通信事業法により電気通信事業者の届け出を出す必要があり守られていない場合は、電気通信事業者法の185条により6月以下の懲役または50万円以下の罰金になるのですが、コレを知っている人は実際にチャットサービスなどに関わった人以外はあまり知らないと思います。こういうリスクを避ける意味で法律を知っている・意識していくというのはそれだけで重要なリスク回避になると思います。

そういうのも含めて最初のとっかかりとしてのウェブサービスを展開する上でほぼ必ずぶつかるような法律問題を易しく説明したこの本はウェブサービスをやる人にとっては必読の本だと思います。

おすすめというよりは必読です!