【書評】『サッカーマティクス~数学が解明する強豪チーム「勝利の方程式」』~ 数学に興味なくてもサッカー好きならおすすめ!

サッカーを数学的に分析しようという本で、サッカー関係の出版をやっているカンゼン社がやっている「サッカー本大賞」で2018年の優秀作品に選ばれていたのがこの本を知ったきっかけでした。Web系の仕事をしているので普段から程度の高い低いはともかくデータ分析は日常的に行なっているのでサッカーだとどんな感じにやってるんだろう?という興味から読んでみました。
概要
シュート決定率やリーグ戦での勝敗数といった統計から、パスやフォーメーションの幾何学、はたまたスタジアムの観客の動きにいたるまで、サッカーは数学的要素に溢れるスポーツだ。それらの要素を最新の技法で追跡・分析すれば、一流選手や強豪チームの動き、名監督の戦略や采配が、驚くほど「数学的に正しい」ことが明らかになる。サッカー愛溢れる数学者による話題の書。
Amazon商品紹介文から

ロンドン生まれ、スコットランド育ちの数学者。マンチェスター大学で数学の博士号を取得。オックスフォード大学とケンブリッジ大学で研究職に就いた後、スウェーデンに移り、現在ウプサラ大学の応用数学の教授。世界各地で、伝書鳩の飛び方、拍手の伝染、アリや魚の群れの動きなどの生物学的・社会学的現象を数学的に分析する研究に携わり、日本でも北海道大学の中垣俊之らと粘菌のネットワークについて共同研究した

2003年に早稲田大学理工学部数理科学科を卒業後、フェロー・アカデミーのカレッジコースにて1年間翻訳を学ぶ。企業でローカライズ業務全般を経験したのち、2006年にフリーランス翻訳者として独立。技術翻訳をしながら、2008年、『買い物する脳 驚くべきニューロマーケティングの世界』で出版翻訳家デビューを飾る。
目次
日本語版に寄せて
『サッカーマティクス』目次より
・サッカーは正真正銘の数学的スポーツだ
・パスの要衝 - 香川真司
・ロング・パスという戦術 - レスター
・まとめ
・キックオフ - 数学をサッカーに役立てる
パート1 ピッチから
第1章 数学でサッカーの試合結果を予測できるか
・ランダムなおはじきサッカー・リーグ
・馬に蹴られた兵士の謎
・ランダムだからこそ説明できること
・数字で暴くサッカーの真実
第2章 バルセロナと粘菌の隠れた共通点
・1-2-7フォーメーションの終焉
・粘菌が作る東京近郊の鉄道網
・ティキ・タカを実現するパスの三角形
・変幻自在のゾーン
・集団行動の法則
第3章 パスの「流れ」を解明する
・なぜ3人での鳥かご練習は無意味なのか
・右側通行の国は避けるh方向も右?
・難攻不落のディフェンス
・ピル口の動きを図にしてみる
第4章 統計だけが知っている選手の本当のすごさ
・当て推量は当てになるか?
・一生にいちどの奇跡
・新たな記録が生まれる確率は?
・1万人に1回の高潮
・青天の霹靂 - ウサイン・ボルトの出現
・常識はひっくり返る
・客観的なランキング・システムは作れるか?
・サッカー版『マネーボール』
第5章 イブラヒモビッチのロケット科学
・ニュートン力学で理解するズラタンのシュート
・ボールの「飛び」を科学する
・運、構造、魔法が合わさるとき
パート2 ベンチから
第6章 サッカーを劇的に面白くした勝ち点3の魔法
・広がった勝ち点のパイ
・崩壊したサッカー界の「序列」
・相手の半分でも勝ち目があるなら…
・自然淘汰を生き抜く監督の直感
・楽しんでこそのサッカー
第7章 戦術マップが暴くチームの個性
・一本槍のパス - イングランド代表チーム
・やっぱりワンバックが中心 - アメリカ女子代表チーム
・真の構造を暴くネットワーク・マップ
・多彩なパス回し - バイエルン・ミュンヘン
・ジェット戦闘機のように飛び回る - バルセロナ
・ロナウド砲の脅威 - ユヴェントス
・監督と選手に伝えるべきこと
第8章 部分の総和を上回る超チーム力
・怠け者は進化する
・選手たちを結びつける現代の絆
・ディナモ・キエフが見せた超チーム力
・チームにアリの集団パワーを
・スター選手をチームプレイに徹させるには
・1+1は3にも4にもなる
第9章 「動き」の世界を数学する
・無数のデータを1枚の図に
・動きの調和の重要性
・見えないリーダーは誰?
・プレッシングの威力
・「動き」の研究の今後
パート3 観客席から
第10章 君は1人じゃない - 群集の化学
・倍々ゲームで広がるチャント
・拍手の伝染
・移籍の噂はどう広まる?
・ウェーブはなぜ起こる?
・モッシュの解析
・群集事故の原因はパニックか?
第11章 みんなの意見は本当に正しい?
・賢い群集
・みんなを出し抜くのは想像以上に難しい
・群集にも苦手はある
・コーナーキックの回数を予想しよう
・プレミアリーグ順位予想、専門家の成績表
・バルセロナ=4539点、キルマーノック=1093点
・数学でギャンブルに勝てるか?
第12章 自腹でブックメーカーんい挑んでみた
・ところ変わればオッズ表記も変わる
・ベットすべき状況は?
・勝ちに必要な成績の目安
・ブックメーカーへの挑戦
・戦略1 大本命の勝ちまたは互角チームの引き分け狙い - オッズ・バイアス戦略
・戦略2 ユーロ・クラブ・インデックスに従う
・戦略3 パフォーマンス指標にしがたう
・戦略4 専門家の意見に従う
・戦略5 妻に訊く
・いよいよ挑戦開始
第13章 挑戦の結果はいかに
・幸運なルークと災難続きのジェーン
・前哨戦
・1週目 - 退屈な引き分け
・2週目 - インデックスの低迷
・3週目 - 思わぬゴール量産
・4〜5週目 - 満足のいく引き分け
・プロのギャンブラーを目指している人へ
終了のホイッスル - 人生に数学的思考を
謝辞
訳者あとがき
注
書評
概要
数学者がサッカーを数学モデルとして分析し、解説した本。
感想や紹介
野球ではマネーボールに代表されるようにもうかなり数学的なアプローチは進んでいるのですが、サッカーは11対11の選手が常に動き回り、またプロ選手とは言っても足でプレイするので、プレイに不確実が高いというのが特徴なためにかなり分析は難しいと言われています。
そういった状況の中でも、様々なモデルを使ってサッカーを数学的にモデル化していく様を読んでいくのはすごく興味深かったです。
構成としてはパートを3つに分けて
「パート1.ピッチから」ではピッチ内でどのような動きやプレイ、戦術が良いのか。偉大な選手といのはどのようなプレイをしているのかを数学モデルを利用して読み解いていきます。
「パート2.ベンチから」では、主に監督目線での話になり、なぜ勝ち点は3なのか、統計的に解析した各チームの特徴、また理想的なチームというのは数学的にどのような組織構成になっているのか?が書かれています。
「パート3.観客席から」では、スタジアムで観戦している人たちの動きに始まり、数学的にサッカーの試合結果を当てることは可能なのか?というのを実際に著者がブックメーカーに掛けながらその様子を描いていきます。
- なぜバルセロナのフォーメーションは数学的に美しいのか?
- イブラヒモビッチのオーバーヘッドは何がすごいのか?
- 勝ち点はなぜ3に設定されているのか?
- 新たな偉大な記録が生まれる確率は?
- 客観的なランキングシステムは作れるのか?
- 数学的に理想的なチームや組織というのはどう構成されているのか?
- スタジアムでのチャントや拍手、ウェーブの広がり方
- 数学でギャンブル勝てるのか?
サッカーを数学的にモデル化して読み解いている本なのですが、ピッチだけでなくいろんな角度から分析している構成になっているので、400ページという長文にもかかわらず飽きることなく読み進めることができました。
ただしほぼ数式は使わないように説明していますが、数式がゼロというわけではなくいくつかは出てきます。また数式はないにしても、どうしても頭を使って理解するところはそれなりに出てくるので、疲れている時やそういう頭を使った本を読みたくない場合には向いていない本かもしれません。
ただ、まだ未読の「サッカーデータ革命」と合わせてサッカーデータ分析におけるかなり中心的な書籍になるのではないか?と思っています。
こんな人におすすめ
サッカー好き、統計や数学好きにはかなりおすすめです!
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません