【書評】月をマーケティングする

2月 9, 2020

概要

1961年、ガガーリンの乗ったボストーク1号に人類初の有人宇宙飛行で先を越されたアメリカは、ケネディ大統領の決断により、1960年代のうちに人類を月に送る「アポロ計画」を立てる。
そのための予算は250億ドル。この膨大な金額を国民に納得させるために、史上最大のマーケティング作戦が始まった。
新聞、雑誌、ディズニーのテレビ番組、映画『2001年宇宙の旅』などを通じて、NASAは月面開発を売り込んだ。日本人も驚いたアポロ11号の月着陸テレビ中継や、大阪万博アメリカ館の「月の石」は、こうしたマーケティングの一環だったのだ。
冷戦時代の宇宙開発競争にアメリカが勝利することができたのは、ソビエト連邦にはなかった「マーケティングの力」を最大限に活用したからである。
そして、宇宙開発によって新しい技術が次々と誕生したのと同様に、現代のマーケティング手法についてもアポロ計画が発端になっているものが多い。
「人類がまだ火星に到達していないのは、つまるところ、火星探索事業のマーケティングが失敗に終わったからだろう」(本文より)
マーケティング・PRの専門家であり、宇宙ファンの著者が、これまで語られることがなかった「史上最大のマーケティング作戦」としてのアポロ計画の姿を描きだす。

目次

私たちはアメリカ合衆国をマーケティングしていた
1章 はじまりはフィクション
2章 NASAのブランドジャーナリズム
3章 NASA契約企業の広報活動
4章 全世界が観たアポロのテレビ中継
5章 月面着陸の日
6章 セレブリティとしての宇宙飛行士
7章 世界を旅した月の石
8章 アポロ時代の終焉

書評

アポロについてなぜあそこまでの大成功に至ったのか?についてマーケティング(特に広報)の視点から書かれた本。宇宙開発×マーケティングについてはCM撮影に使いました、程度でしか今まで話されていなかったので斬新な切り口。

宇宙開発が好きな人も、マーケティング(広報)に興味がある人も両方楽しめる。
ただし、どちらの知識も浅い(特にアポロ計画関係の知識)が薄いと読んでいくのは少し大変かも。
どちらかがそれなりの知識があれば片方が浅くても補完はできると思う。

最後に装丁がかなりカッコいい!デザイン本みたいな感じでカラー写真も多い。本棚に置いておいても絵になる本。

お値段がそれなりにするのですが、ページ数も多いしカラー写真も豊富なので、そんなにコスパが悪いわけではないと思います。

デイヴィッド ミーアマン スコット;リチャード ジュレック (著), 関根 光宏;波多野 理彩子 (翻訳)